新型インフルエンザの話題が出た時や冬が近づくにつれて、マスクが在庫切れするくらい売れるのと、Yahoo!知恵袋なんかでの質問が増えたりします。
マスクがインフルエンザウイルスにどれだけ防げるのかですが、ウイルス粒子の大きさを知る必要があります。
ウイルスによって粒子の大きさが20-400nmの幅があり、インフルエンザウイルスはおよそ100nmの大きさです。
大きさの単位を簡単に説明しますが、1nm(ナノメートル)の1000倍が1μm(マイクロメートル)で、更にその1000倍が1mm(ミリメートル)です。
1mmの1/1000が1μm、そのまた1/1000が1nmです。
N95マスクや更に上のN99マスクもPM2.5対策として売られていますが、生地の目はウイルス粒子より非常に大きいのです。
ただ、ウイルス粒子との比較を単純にしても意味はありません。なぜなら、ウイルスがそのままの状態で空気中を飛んでいる事はあり得ないからです。
インフルエンザが飛沫感染する時は、感染者が咳やくしゃみをした時に空気中を漂える程度の大きさの【飛沫】を鼻や口から吸いこんでしまう事で感染するのです。
この飛沫の大きさが5μm以下の物を「飛沫核」と呼び、世間一般でいう「空気感染」は「飛沫核感染」と言うのです。
この飛沫核にインフルエンザウイルスが付着したまま、乾燥した空気中を長時間漂えるので「感染力」が高くなり「感染範囲」も広がります。
現実的にはインフルエンザの飛沫核感染にはある程度のレベルの条件が必要な為、割合からみると飛沫感染の方が高いのです。
ウイルスはどれも乾燥に弱いので、飛沫核が浮遊している空気が乾燥し過ぎであれば、ウイルスの生存出来る限界に達して死滅します。
これらの条件を考えれば、マスクで飛沫感染を防げればいい訳ですから、ウイルス用のマスクでなければならない理由はなく、通常の使い捨て不織布マスクを使えば十分です。
ガーゼマスクは不織布マスクより目が粗いのと、使い捨てするには高くつくのが難点ですから、経済的、効果的に考えるとお勧めできません。
N95規格のマスクは、しっかりと顔に密着して装着すれば役に立ちますが、実際にピッタリと装着するとどうなるかというと、気密性が高いので息苦しさが尋常ではありません。
N95規格のマスクを業務で使わなければならない職場で働いている人がいますが、30分働いたら別の人と交代し30分の休憩をするローテーション制になっています。
つまり一般人が日常生活でこのN95規格のマスクを効果的に使うのは無理があるのです。
この様な特殊な職場でN95規格のマスクの特徴や効果を一般人よりも良く知っている人が普段の生活でインフルエンザウイルス対策に使っているのは、実はスーパーで買える普通の使い捨て不織布マスクなのです。
さて、それではマスクを正しく装着するとか外すのは、どうすべきなのでしょう?
マスクと顔の間に隙間があるとそこを空気が素通りするので、特にマスクの鼻の上についている金属は顔の形状に合わせて押し当てて曲げるのを忘れない様にしましょう。
街を歩いていると、鼻を出したまま口にだけマスクをしている人がいますが論外です。
問題はマスクを外す時なんですが、本当はこっちが難しいのです。
マスクにウイルスがいっぱい付着している訳ですので、表面には手を触れずに、付着したウイルスが散らばらない様にゆっくりと前方に静かに外します。乱暴にやると折角マスクに付着させておいたウイルスを外した瞬間にたっぷりと吸い込んでアウトですよ。
ウイルスがいっぱい付着しているので使い捨てが基本なのです。
よくありがちなのが、暑い時や飲み物を飲む時にマスクをずらす光景をみますが、これもマスク表面を触ってはアウトですし、ずらした時に付着していたウイルスが目の前に飛び回りますから、それを吸い込んでしまってアウトです。
ではどうするかというと、一時的にマスクをずらしたい場合でも、「ゆっくりとマスクを外して捨てる」のが正解です。
しかし、日常生活でここまでやっちゃうとマスクが何枚も必要になるので、ウイルス感染の危険が高い人ごみに行く場面に合わせてマスクを着ける判断をするしかないですね。
最後にもう一つの注意点が、手にウイルスがついて口から感染するケースです。
条件によっては、こちらの方が飛沫感染より危ないのです。
具体的に考えられる経路は、ドアノブ、テーブル、電車のつり革にインフルエンザの感染者の飛沫が付着していて、それを手で触り、食事をする時なんかに口から侵入して咽喉頭にウイルスが付着して感染してしまいます。付着したウイルスの寿命はそんなに長くはないのですが、油断は禁物です。
食事の前に手洗いをしましょうというのはこの理由なんですね。もちろんトイレの後の手洗いも念入りに行いましょう。普段から口元を手で触る癖がある人は気を付けましょう。